比田井南谷(ひだい なんごく)
比田井天来の門下からは、後の書壇をリードする逸材が輩出しました。その多くは、革新的な独自の書の世界を切り開きました。馴れと停滞を嫌い、常に新たな表現を求めた天来の思想が、門下の自由な書創造を導いたのです。
天来の息子、南谷がめざしたのは、「書は線の芸術である」という天来の思想を、極端にまでおしすすめることでした。昭和20年に書かれた心線作品「電のヴァリエーション」は、書の歴史の中で、はじめて自覚的な文字を書かない書として注目を集めました。文字であれば、読んでその意味にとらわれますが、文字が書かれていないのであれば、純粋に線表現を味わうことができると考えたのです。
父、天来と同じように、南谷の作風も常に変貌をとげ、また、用具も墨や紙にこだわらず、油絵の具やキャンバスなども用いました。さらに、2種類の墨を磨り混ぜることによって、書いた時の筆の動きを定着させる独特の方法は、周囲の注目を集めました。
南谷は大作制作にあたって、必ずスケッチを書きます。スケッチには制作意図が赤裸々にあらわれ、完成された作品にはみられない純粋な感動を見ることができます。今回は、大作のほかに、スケッチを20点ほど展示し、南谷の作風の変遷をたどります。
 

スケッチ 1953年

スケッチ 1967年

スケッチ 1979年